イート•ザ•ワールド

ワセジョのカフェ店長は世界のご飯を食べてみたい

初めてのミャンマー料理は、DV男みたいだった

誤解を与えないように最初に記しておくと、とっても美味しかった。

どこがDVなのかというと、それはまた後ほど。

 

今日の夕方に「エスニック食べたい病」が発症した私は、高田馬場ミャンマー料理レストラン「マノー ミェ」を訪れた。線路沿いの、ゴミ箱が並んでいるような路地を進んだ所にある、蛍光ブルーの電飾が入り口を囲む小さなお店だ。時刻は午後六時半頃。約束をした先輩が遅れるとのことだったので、先に私がお店に入った。するとそれまでテーブル席で談笑していた哀愁漂うミャンマー人の女性店員二人がおしゃべりをハっとやめ、席を立った。テーブル席が4つくらいの簡素な店内。奥では白いカーテンが、奥のものを隠すのか隠さないのかはっきりしないくらいやる気無く垂れ下がっている。客も私一人だった。先輩が来るまでは注文する気もなかったので、ついそのミャンマー人の女性店員に「あの、おしゃべりしていてください」と言ってしまった。アットホームどころではない。日本に住むミャンマー人の生活がにじみ出ているような、人の家のような雰囲気なのだ。それなのになのになぜか、日本人の私まで落ち着く。

 

先輩が店に着いて、とりあえず二人でミャンマービールを頼んだ。瓶のみで提供されるそれは、ひっかかりも苦い後味もない、レモンを絞ったようなような爽やかさ。これならビールが苦手な人でも飲めるかも。場所によっては一年中平均気温が30度を超えるのミャンマーで、水の代わりに飲んだらきっと最高。

 

ここから、無加工の食堂感あふれる料理写真をのせていこうと思う。

前菜として頼んだラペットゥ(茶葉のサラダ)

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かりっかりの豆、フライドガーリック、トマト、葉野菜の千切り、ピーナッツ、茶葉に魚醤、ごま、レモン?ライム?を和えている(と思われる)

とってもチャンキーで、食感がまず楽しい。そして、食指がとどまることを知らなくなる。魚醤と柑橘、それにニンニクなんておいしくないわけがないじゃないかーーー!!!ていうか、渾然一体となりすぎて、でもちゃんと味がまとまっていて、感動しかない。この複雑さ、これだからエスニックはやめられない……と思わせられる一品。このポーションで700円?と思うかもしれない。でも、感動に700円って安くないだろうか。実は見た目に反して、ボリュームは結構ある。ビールのつまみに最適だ。これだけのためにまたこの路地裏レストランに行きたいと思うくらいの衝撃だった。これは、他の料理にも期待せざるを得ない!!

 

アメーダーヒン(ビーフカレー)セット

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まず、左の皿(ルー)が運ばれてきた。しばらくして、ご飯が運ばれてきた。それからまたしばらくして、野菜とその付けダレが運ばれてきた。ちなみにセットのスープはさらにその後、モヒンガーが運ばれてきた後に運ばれてきた。とってもまったりだ。こういうのも情緒があって好きだ。

器を変えれば、中村屋のビーフカリーみたいなルックス。牛肉以外はどろどろになるまで煮込まれている。インディカ米にルーをすこしかけて、口に運ぶ。ん?甘い…油の甘み?このナッツみたいな香ばしさの正体は?カレーなのに、クミンの主張が無い。でもスパイスの香りが後にくる………辛っ!!!!!!!!!!

なにこれ、後味辛い!すごい!見事に後味だけ辛い!!

野菜で中和しようと急いでドレッシングをかけて一口……かっっっら!!!!!容赦ない!!!!一口めから口が痺れる!!!!

ドレッシングをかけたキュウリはオイキムチを彷彿とさせた。つまり唐辛子の味。辛い訳だ〜〜と思いながらも辛いだけじゃないそのドレッシングかけ野菜がまたごはんを誘う。辛いのに、野菜にドレッシングをかけてしまう。インディカ米は日本米よりあらゆるソースに絡む。至福。辛い。インディカ米が太刀打ちできないほどに辛い。カレーも辛い。私の口腔内大戦争の火ぶたが切って落とされた。

 

モヒンガー(魚介のスープのにゅうめん)

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食べかけのお見苦しい写真で申し訳ないが、奥に写るラーメンのようなものこそモヒンガーである。みよ、このポタージュ系ラーメンのようなルックス!突然巨大化したポーション

説明書きには魚のスープとあるが、ブイヤベースを想像してはいけない。まるでおしるこのようなどろどろさである。透明感ゼロ。しかしポタージュ系ラーメンに目のない私のテンションは最高潮へと達した。

パクチーと共に上に乗っているのは、豆の揚げ物。それだけでもサクサクで大変美味しいしビールがほしくなるのだが、ポタージュと合う!もはや、メインのそうめんより合う!!!しかもこのポタージュ(スープと呼ぶにはあまりにポタージュなのでポタージュと呼ぶことにした)、甘いのだ。多分砂糖も入っているのだと思うが、この甘きポタージュが私の口腔内大戦争を終結へと導いたのは言うまでもない。このポタージュばかりは、なにが入っているか考えるのをやめてしまった。完全な調和。パクチーと豆の揚げ物がアクセントになっているぶん、ポタージュ内は世界平和を象徴するかのごとく安寧が維持されている。優しい。染み渡る。真冬の凍えるような寒い日に、このスープをすすったら……いや、夏バテで何も喉を通らないような時に、このスープをすすったら……。春のうららかな日差しにも、さらなる幸福を与えてくれよう。木々の枯れ行く秋の日も、人々の体を越冬の準備へと誘ってくれよう。四季折々のシーズンにまで調和する。平和のポタージュ。あーーーーラブ•アンド•ピース。

 

軽やかな食感と刺激的な味付けで食欲をこれでもかと誘い、旨辛さで打ちのめしたと思ったら、世界平和のような優しい味で包み込む……

自分に対して興味を抱かせて懐に抱き、愛という名目の暴力を振るい、最後は痛みを全て忘れさせるような優しさで包み込む……

嗚呼、なんというDV男。

これは中毒になってもしょうがない。

この順番で頼まなかったらDVにはならなかったわけだけど、でも、このギャップ!辛さと甘さの多様性東南アジア料理の魅力は他にもたくさんあるけれど、優しい甘さと刺激的な辛さの組み合わせって、中毒性が最強。

あ〜〜食べて良かった。今日のメニューセレクトは大成功。

また行かなければ、高田馬場の路地裏に。